永井みみ「金魚とミシン」という本を読みました。
主人公は認知症のカケイさん。彼女のモノローグでおはなしは進みます。認知症といってもはっきりしているところ、そうでないところが混ざっています(このへんすごくリアル)。
デイケアに行ったり、時々嫁が世話に来たり、その嫁に意地悪をされたりします。合間に回想されるカケイさんの生い立ち、兄弟や子どもの話…その過去は壮絶ですが、カケイさんの語り口は淡々として、かえってカケイさんの後悔や絶望が悲しく浮彫りになります。
こうやって少しずつ思い出せなくなって、その分昔のことを思い出していくんだろうなあ。でもわるい意味じゃなくて、それもまたいいんじゃないか、と思わされるものがありました。
著者の永井みみさんは介護職の経験者だそうで、とても描写がリアルです。この本は終活の参考にしようと手にとったわけではないけれど、終活的な視点でいうと、カケイさんが必死の思いで遺言書を書くシーンがあります。本当に遺言は大事。今さらながら。嫁と遺産相続の話をするくだりもあって「相続順位」とか「養子縁組」とか妙に生々しい(笑)
カケイさんのモノローグ、ちょっと子ども返りしているので「アルジャーノンに花束を」を思い出しました。
「しあわせでしたか?」物語の序盤、カケイさんはデイケアの職員にそうきかれます。
いよいよ自分の人生も終わりだという時、私は一体どうこたえるんだろうか。不幸だったとまとめるのではなく、いろいろあったけどいいこともあった、しあわせだった、とこたえられるといいな。。なんて考えた今回の読書でした。